開発許可とは?|都市計画法の基本的な知識を整理

 「開発」とは、実際にどのような行為を指すのでしょうか。建築や不動産業界以外の方にとっては、「開発」と聞くと、商品の開発を思い浮かべるかもしれませんが、建築・不動産分野における「開発」とは、基本的に土地の利用や形状を変える行為を意味します。本コラムでは、建築や不動産に関わる方はもちろん、一般の方にも役立つ都市計画法の「開発」の基本についてわかりやすく整理していきます。

開発行為とは?

 「開発行為」とは都市計画法4条12項で、次のように定義されています。


この法律において「開発行為」とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう。

 ここで重要なのは、「建築物の建築目的で行う土地の区画形質の変更」という点です。

 建築物を建てずに単に土地の区画形質を変更するだけであれば、都市計画法上の「開発行為」に該当しません。

 何をもって建築物と見なされるのかについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

 ▶ 建築物とは?|定義と建築確認申請の必要性について

 また、開発行為の定義として、「特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」もありますが、実務上で関わる頻度としては多くないため、まずは「建築物を建てる目的で、かつ、土地の区画形質を変更する場合が開発行為となる」と押さえておきましょう。

 なお、特定工作物とは、周辺環境に大きな影響を及ぼすおそれのある工作物のことを指し、具体例としてはコンクリートプラントやゴルフ場などが挙げられます。

土地の区画形質の変更とは?

 建築物を建てる目的であっても、土地の区画形質を変更しない場合は「開発行為」に該当しません。「土地の区画形質の変更」とは、以下の3つに分類することができます。

1.「区画」の変更
 例:一つの土地を塀や道路などで明確に区分し、複数の土地として利用する。
 ※単なる土地の分筆では区画の変更にはなりません。

2.「形」の変更
 例:切土、盛土等により、土地の物理的形状を変更する。
 ※開発許可を申請していれば、盛土規制法に基づく宅地造成許可の申請は原則不要となります。

3.「質」の変更
 例:農地を宅地に変更し、住宅を建築する。
 ※この場合は別途、農地法に基づく農地転用許可が必要になります。

許可が必要となる開発行為

 「開発許可」とは、都市計画法に基づき、一定の条件下で開発行為を行う場合に必要となる許可です。具体的には、対象となる区域や開発の規模によって許可の要否が異なります。

1.市街化区域の場合
 市街化区域とは、住宅地、商業地、工業地など、人が集まって生活・経済活動を行う区域のことを言います。市街化区域では、原則として 、1,000平方メートル以上の開発行為の場合は許可が必要となります。ただし、自治体によっては許可が必要な規模を条例により上乗せ規制している場合がありますので注意が必要です。例えば、大阪市や堺市では 500平方メートル以上 の開発行為に許可が必要となっています。

2.市街化調整区域の場合
 市街化調整区域とは、市街化を抑制し、無秩序な都市拡大を防ぐ区域のことを言います。市街化調整区域では、規模にかかわらず、原則としてすべての開発行為に許可が必要です。

許可が不要となる開発行為

 市街化区域で許可が必要となる規模の開発行為や、市街化調整区域で開発行為であっても、一定の条件を満たす場合には開発許可が不要となるケースがあります。代表的なものをまとめると以下のとおりです。

1.農業、林業、漁業従事者の住宅や倉庫など
 地域の営農活動などを守る観点から、農林漁業を営む方が自ら利用する住宅や倉庫については開発許可が不要とされています。

2.図書館、公民館、変電所などの公益上必要な建築物
 ただし、病院については公益性が高い施設であっても、原則として開発許可が必要となる点に注意してください。

3.仮設建築物
 工事現場の事務所や仮設倉庫など、一時的に設置される建築物については許可が不要です。

建築許可とは?

 「建築許可」という言葉も都市計画法でよく登場します。一般的には都市計画法第43条に基づく許可を指し、市街化調整区域内で開発行為を伴わずに建築物を建てる場合に必要です。

 市街化調整区域では原則としてすべての開発行為に開発許可が必要ですが、仮に開発行為を行わずに建築だけを行う場合には、この「43条許可(建築許可)」を取得しなければなりません。

おわりに

 都市計画法における「開発許可」「建築許可」は、適正な土地利用や周辺環境保護のために欠かせないルールです。今回のコラムでは、こうした制度の中でも特に基本的な考え方を中心に整理してご紹介しました。実際には、許可の判断にあたってはもっと細かい基準や運用上の解釈があり、都市計画法の基本を理解していないと判断が難しいのが現実です。土地活用を検討される方の中には、そもそも都市計画法の枠組みを知らないまま計画を進めてしまい、後で大きな修正を迫られるケースも少なくありません。少しでもこのコラムが、これから開発や建築を検討される方の参考になれば幸いです。

 

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 今後も、建築基準法や都市計画法に関するコラムを順次掲載してまいりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。